秘密の約束 〜遠き日の思い出〜

「おねえちゃん、あのね……」

軽井沢へ家族旅行に行ったときのことでした。
長時間の車旅を終えようやくたどり着いた宿泊先のホテルでの、つかの間の時間。

荷物整理をする父と母のかたわら、
私たち姉妹は邪魔にならないよう窓際で外の景色を眺めていました。

そんな折、妹が突然はじめたこしょこしょ話。
「わたしのお菓子、もうすぐなくなっちゃう。おねえちゃんの、ちょっとちょうだい?」
そう言ってドラえもんの絵がついている「お菓子袋」を覗き込み、
私に補充を求めるのでした。

旅行の楽しみをふくらませるものとして、
また、車酔い対策として母が提案した「お菓子袋」。

渡された500円で、めいめいが好きなお菓子を駄菓子屋さんで選ぶ。
私たちにとって、それは旅行と同じくらい楽しい一大イベントでした。
そして、車の中でそのお菓子をシェアすることもまた、楽しみのひとつでした。

「いい子にしていたらこのお菓子あげる。パパとママ、困らせないようにしようね」
ひだまりに包まれた窓際で、私たちは秘密の約束を交わしたのでした。

*******

この写真は、父がさりげなく撮ってくれた一枚でした。
大きくなってアルバムを見返しこの写真を見つけたとき、
当時の様子が一瞬にして蘇ってきたのを鮮明に覚えています。

写真って素敵ですね。お父さん、ありがとう。